産業用ロボットの市場が拡大する中、減速機とモーターを一体化した機構の重要性が高まっている。だが、それを人間に身近な機器向けへ展開するには「薄型化」が一つの壁となっていた。日本電産グループの日本電産シンポは、「超偏平アクチュエータ」で業界最薄の幅を実現。パワーアシストスーツの関節や電動車いすの車輪などへ、導入を見込む。 日本電産シンポが展開してきた波動歯車減速機「FLEXWAVE(フレックスウェーブ)」に、日本電産本体が強みとするブラシレスDC(直流)モーターを組み合わせた。モーター部分が従来品のように外へ出っ張らないのが大きな特徴だ。 ラインアップは、厚さ40mm・定格容量90Wの小型品と、同45mm・同200Wの大型品の2種類。どちらも同容量の従来品と比べ、厚さは4分の1以下、重さは2分の1以下となった。減速機のバックラッシュ(歯車のがた)が低いため、起動時の衝撃も抑制できる。 最初に小型品の試作が完成したのは2015年。内部が空洞となるフレックスウェーブの構造に着目し、外側が回転子となるアウターローター型モーターを中に埋め込んだ。空洞部をうまく利用した上で、モーターの幅をできる限り薄くしたことがカギだ。日本電産の研究開発拠点の一つである滋賀技術開発センター(滋賀県愛荘町)と連携し、急ピッチで開発。2016年初頭の米国の見本市「CES」への出展にこぎ着けた。 大きな反響を受けて間もなく、大型品の開発にも着手した。だが大容量に対応するには、アウターローター型モーターでは薄型化できないことが判明する。そこで目をつけたのが、軸方向に固定子(コイル側)と回転子(磁石側)を配置する構造の「アキシャルフラックスモーター」だった。 開発にあたり、今度は台湾モーター基礎技術研究所(台南市)と連携。日本電産シンポ技術開発本部副本部長の前口裕二執行役員は「磁石とコイルとの隙間を一定に保つため、十分な剛性の確保や寸法公差の設定で苦労した」と振り返る。
取締役 専務執行役員 井上仁氏
「減速機」というモノづくりに長年励んでき当社が、栄えある「”超”モノづくり部品大賞」を頂きまして、誠に光栄に存じます。 少子高齢化というメガトレンドの中で、今後ますます産業用ロボット、福祉介護ロボット、サービスロボットなどが必要とされてきます。コンパクトで高減速比が得られる当社の減速機「FLEXWAVE」と、小型・偏平なモーターとをうまく融合することで、それらの駆動源となるドライブユニットをコンパクトにまとめ上げて作ることができました。 ご高齢の方や身体の不自由な方を助けるアシストスーツの駆動や、スマートモビリティーの駆動など、あらゆる装置をコンパクトに作るために、お使いいただけると思います。
日立製作所と日立ジョンソンコントロールズ空調(東京都港区)が開発し、エアコンに搭載したカメラ「快適性を追求した家庭用エアコンの画像処理モジュール」は、色の情報を基に室内の人間を識別する。さらに体感温度の変化を予測するほか、人の位置や在室時間などの情報から、温めすぎや冷やしすぎといった不快な環境を防ぐ。こうした機能を持つエアコンは初めてという。 今回受賞したカメラは「くらしカメラ AI(エーアイ)」と呼ばれ、室内の人を服や顔、髪の色で識別する。在室時間に応じてエアコンが自動で6ヵ所の吹き出し口から出る風の方向や量を調整する。また就寝する時など電気が消えた場合でも、位置が動かなければ同じ人と認識し、快適な風を送る。 日立製作所は2012年に、在室人数や部屋の間取り、日が差し込む場所などを把握する「くらしカメラ」をエアコンに搭載。以降、くらしカメラを進化させてきた。 日立ジョンソンコントロールズ空調の上田貴郎ハードウェア設計グループ主任技師は、くらしカメラの開発について「実験室や社員の自宅エアコンにカメラを据え付け、長期間リビングを撮影した。社員の家族も含めた一大プロジェクトだった」と振り返る。
このたびは「モノづくり日本会議共同議長賞」をいただき、誠に光栄です。これまで家庭用エアコンは、省エネ性を軸に研究開発が進められてきました。さらに近年では、快適性という新たな評価軸が生まれています。これらに画像処理技術で応えたのが今回の画像処理モジュールです。 このモジュールによって人の量や活動量などを把握する画像認識に加え、人を識別する機能などを搭載し、家庭用エアコンの快適・省エネ運転を実現してきました。また、長時間エアコンを使用すると不快になるという課題も解決しました。
「メカニカルファイバーテープ(メカニカル疑似架橋)」は、合成繊維(ファイバー)により、粘着剤の軟らかさと接着剤の硬さを両立しつつ、両面テープなどの接着(粘着)層から基材を除去することに成功したもの。アクリル系粘着剤の中にファイバーを均等に分散させることで、それが疑似架橋の役割を果たし、十分な強度を実現。紙や不織布、樹脂フィルムなど強度を保持するための基材なしでも、両面テープとして利用できるようになった。 基材を使わない分、テープをより薄く軽くすることが可能な上、粘着剤成分が紙や不織布の中に染み込んでいくムダもなくなる。紙や不織布の不使用分も加味すれば、大幅な省資源化が可能となる。もちろん、両面だけでなく片面テープとしても利用できる。
社長 濱野 尚吉氏
このたびは栄えある賞を頂戴し、誠に光栄に存じます。今回、製品化した両面テープは分子勾配膜にファイバーを均等に分散することで、疑似架橋を得ることにより、軟らかい粘着剤の利点と硬い接着剤の強みを両立させたものです。いわば、これまで別素材であった粘着剤と接着剤の“良いところ取り”をした特性を持ちます。 さらにテープの基材として紙や不織布、フィルムなどを使いません。アクリル樹脂の使用量もほぼ半減します。
金属3Dプリンターで困難とされてきた、銅合金の3D積層造形技術を確立し、高強度と高い熱伝導性などの特性を生かして開発したのが、「アーク溶接高電流水冷トーチ用銅合金3D積層造形部品」。 従来工法では不可能な複雑形状の内部流路を形成して冷却性能を高め、小型・軽量化。1000Aもの高電流溶接に対応する水冷トーチで、サイズは同社従来品比7割減の直径30mm、重さは約9割減の850gとした。 厚板の溶接は従来、広い開先(溶接する部分に設ける溝)と、何度も溶接を繰り返す多層盛りが必要だった。だが、新トーチは狭い開先での1パス(1回)溶接が可能となる。
取締役常務執行役員 蓑毛 正一郎氏
このたびは、大変名誉ある賞を賜り誠にありがとうございます。本部品は、20mmまでの厚板の1パス溶接を可能にする、独自の埋もれアーク制御技術を用いた、高能率アーク溶接システムのトーチ向けとして開発しました。 「3Dプリンターで銅の高密度造形は不可能」が通説の中、あえてそれに挑戦したことから、すべてが始まっています。開発者による地道な研究と試行錯誤の連続により、高強度・高導電率の銅合金3D積層造形技術を、世界で初めて確立するとともに、従来とはケタ違いの小型トーチ部品を完成できたことは非常に喜ばしく、開発者を誇りに感じています。 今回の開発が、金属材料加工分野の発展に、少しでも貢献できることを期待しております。
日立化成は独自のセパレーターを採用し、製品寿命を同社従来品の1.5倍に延ばした。交換頻度を減らすことができ、自動車のランニングコスト低減に貢献する。業界で初めて、走行距離に関係なく38ヵ月の製品保証も付けた。エンジンの始動回数2万8000回(約2.8年分)に相当する使用状態で、従来比約10%の燃費改善を見込む。 アイドリングストップ機能を持つ自動車で使われるバッテリーは、一般に充電時に発生する硫酸イオンが重力で、バッテリー下部に沈降する。こうなると、電解液の濃度が薄いバッテリー上部に放電反応が集中。電極が劣化し、製品寿命が短くなる課題があった。 日立化成は日立製作所とともに、硫酸イオンの沈降を防止する繊維層を開発し「G3セパレータ」に組み込んだ。繊維層の表面処理にも工夫を凝らし、硫酸イオンの沈降は止めながら電極間の移動速度を保つことに成功。製品寿命の長さと高い充放電性能を両立したバッテリーに仕上げた。
日立化成 執行役常務兼エネルギー事業本部長 中川 操氏
このたびは、”超”モノづくり部品大賞「日本力(にっぽんぷらんど)賞」を頂き、大変光栄です。 日立化成は自動車バッテリー「Tuflong(タフロング)シリーズ」として、普通自動車や軽自動車、事業用車両向けなど豊富なラインアップを展開しております。中でも近年普及が著しい、アイドリングストップシステム自動車には大容量、短時間での充放電性能および、長寿命を兼ね備えた高性能なバッテリーを発売しています。 「Tuflong G3」は当社と日立製作所が開発したセパレーターにより、充放電性能と長寿命という相反する性能を両立させたシリーズ最上位のバッテリーです。当社は今後も、お客さまの期待を超える製品を作り続けてまいります。
日野自動車の大型商用車用高性能2段過給エンジン「A09C」は、5月に14年ぶり全面改良して発売した、大型トラックの新型「日野プロフィア」に搭載されている。従来の13ℓエンジンから、9ℓエンジンにダウンサイズし、約300㎏の軽量化を実現。一度に運ぶ輸送量を多くすることができるため、トラックにとって重要な経済性と輸送効率の向上に貢献する。
エンジン設計部 副部長 堀内 裕史氏
このたびは「日本力(にっぽんぷらんど)賞」を頂き、誠に光栄です。今回、大型トラック「日野プロフィア」の全面改良に合わせて高性能2段過給エンジン「A09C」を開発し、「2016年排出ガス規制」に適合させるとともに、国内大型トラックでトップの「重量車燃費基準」+10%を達成できました。
大型商用車は燃費が最大の商品力です。エンジンの熱効率を徹底的に追求し、エンジンを構成する各機能部品の高効率化にこだわりました。開発中にいくつもの難題に直面しましたが、開発メンバーの情熱とサプライヤーの多大な協力によりすばらしいエンジンになりました。受賞は開発に携わった皆の励みになります。今後も、もっといいエンジンづくりに精進して参ります。