製品概要
「高切り込み・高送り」という今までにないコンセプトを実現した超高効率加工用工具。一般的な高効率加工では工具の送り速度を抑え、工具の切り込み量を大きくする「高切り込み・低送り」か、切り込み量を小さくして送り速度を高速化する「低切り込み・高送り」の二者択一だった。同製品は4枚刃の刃幅を等分割にしながら各刃の位相をずらすことで切削量を不均一にする特殊刃形を採用。また切りくずの排出性を高め、耐熱性・耐摩耗性に優れる独自コーティング材を施すことで、高速切削時に生じる「びびり振動」を抑制、高切り込み・高送り加工が可能になった。3次元の複雑形状の加工では一般的な加工法の等高線加工から、加工時間が早い倣い加工に切り替えることができ、従来比で8倍の高速化が可能だ。
Voice 日立ツール野洲工場長 野田 修氏
近年、工作機械の高速機の普及に伴って、「低切り込み・高送り」で高能率加工が行われてきました。しかし、さらに高能率な加工を求めた時に「高切り込み・高送り」が可能な工具がニーズとして高まっています。今回の受賞作は従来にない「高切り込み・高送り」を可能にした超高能率工具です。さらに従来では加工が不可能と思われていた傾斜加工も独特な溝形状の採用により可能にしたもので、多くの加工方法への対応が期待できます。今回、この超高能率工具で機械部品賞を受賞できたことを光栄に思うとともに、今後もお客さまの要望に応えるべく、モノづくりに励んでいきたいと考えています。
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製品概要
切削・中ぐり加工で製造した屈曲管。パイプ曲げ加工や板金・溶接加工で製造した屈曲管と違い管の肉厚が一定で耐久性に優れている。必要に応じて肉厚を自在に調整できるのも特徴だ。加工素材は主に鉄やチタン。最初に大まかな形を削りだし、両側から内径を中ぐり加工、最後に外周を削って完成する。一見単純なようだが、管の内側で段差を作らないようにするには高い技術力が必要。CADデータや治具にも工夫を施している。最近は小型・薄肉製品の製造研究も進めており、小物では内径50.9mm、肉厚0.8mmまで製造可能だ。
課題は、パイプ曲げ加工に比べて原料費や加工費がかかること。そのため発電所の配管設備など、コストより安全性・耐久性を重視する分野に向けて販売する方針。 Voice 野田金型社長 堀口 展男氏
まさか受賞できると思わなかったので、大変喜んでいます。「一体品削り出しエルボ」の姿自体は何の変哲もないパイプなので、その価値をなかなか理解しにくいものです。製品の真価をご理解頂いた審査員の方々にお礼を申し上げます。 板金・溶接加工で屈曲管を製造した場合、管の肉厚は一定にできません。均一な肉厚を実現したこの屈曲管は、手前みそですが「100年に1度の発明になるのでは」と期待しています。 海外からの引き合いも多い商品ですが、製造業の空洞化を防ぐためにも日本でモノづくりをし、販売していきたいと思います。産業活性化の一助になれば幸いです。 |
製品概要
ダイヤモンドコーティング超硬ダブルアングルドリルは、航空機産業を中心に採用が増えている炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の穴あけ加工用ドリルだ。CFRPは軽くて丈夫だが、むしれや盛り上がりなどの不良が発生しやすく加工が難しい。
同ドリルではこの課題を解決するため、通常は一つの角度でだけ構成される切れ刃を二つか三つの角度で構成した。これによって、切削抵抗をあける穴の壁際に分散させ、不良を減らす。 さらに超硬の母材に独自のきめ細かいダイヤモンドコーティングを高密度で施し、耐摩耗性を高めた。この結果、工具価格は、通常のCFRPの穴あけで使われる多結晶ダイヤモンド(PCD)工具の3分の1から5分の1に抑えられた。 Voice オーエスジー株式会社社長 石川 則男氏
昨年は「Xパフォーマー転造タップS‐XPF」で「奨励賞」を受賞させていただきました。今回は「機械部品賞」とよりランクの高い賞を受賞でき、大変光栄に思います。今回受賞した「ダイヤモンドコーティング超硬ダブルアングルドリル」は、主に航空機産業向けを狙っています。 当社では現在、米国を中心に航空機産業向け工具の拡充と拡販を進めています。航空機関連工具の専門営業チームを新設したり、米国子会社で航空機関連工具の生産品目の増加に取り組んだりしているところです。こうした中、今回の受賞は現場で開発や生産にあたる当社の社員にとっても、励みになると喜んでいます。 |
製品概要
フジキンは250℃の高温で使える圧力制御式ガス流量制御器「FCS‐P」を開発した。主に半導体製造装置に搭載し、特殊材料ガスの精密流量制御に使う。高温対応の実現で、半導体素子の心臓部に使われる高誘電率ゲート絶縁膜材料の選定範囲が一気に拡大した。この結果、半導体素子のさらなる微細化や低消費電力化が期待される。
高誘電率材料は原料が常温において液体か固体で、ガス化し安定供給するには高温対応の流量制御器が必要だった。従来は80-120℃対応だったが、圧力センサーとピエゾ素子駆動のコントロールバルブを改良し、耐熱性の問題をクリアした。同制御器は半導体に加え、太陽電池などの製造工程に使う化学気相成長(CVD)プロセス装置への搭載を見込む。 Voice フジキン社長 野島 新也氏
ガス流量制御器で世界初の250℃対応を実現しました。本製品の完成で、高誘電率ゲート絶縁膜材料の選定できる範囲が飛躍的に拡大し、半導体素子の更なる微細化、低消費電力化を実現する可能性が格段に高まりました。扱う高誘電率材料は常温においてガスでなく液体または固体で、多くの種類が存在します。これらの材料を高温加熱でガス化し安定供給することが可能となりますので、新しい半導体プロセスを切り開くキーパーツとして大きく貢献できるものと確信しています。今後も継続して新製品の開発に注力し、まずは(モノづくり部品大賞の)8回連続受賞に向けて挑戦していきます。 |
製品概要
TR多条ネジは市販のネジに比べて緩みにくく、耐振動性を6倍程度に高めた。2種類の異なるピッチのナットを組み合わせ、振動でボルトを締める方向に対して内側にあるナットが緩んでも、外側にあるナットがストッパーの役目を果たす。2010年7月の発売以降、搬送機器や食品機械など振動が多く発生する機械に導入されている。
直径16mmの1本のボルトにピッチが2mmと1mmの異なる二つのナットをはめる。ボルトに二つのピッチのネジ山を加工できる独自の金型を開発したことで、製品化に成功した。 転造で加工するため切削加工のように切りくずが出ず、製造工程での環境負荷を低減できる。このネジを使うことで、機械の安全性や耐久性の向上につながる。 Voice 寺尾機械社長 寺尾 孝司氏
まさか当社のような中小企業が賞をいただけるとは思っておらず驚いています。当社の経営方針は「常にユーザーニーズを掘り起こす」です。社長に就いてから30年間、「緩まないネジが欲しい」というユーザーの要望に応えたネジの開発が目標でした。今回開発した「TR多条ネジ」は、これまであまり顧みられなかったネジの緩み対策に貢献できると思っています。工作機械の進化による金型の加工精度向上、そして何より困った時に情報を提供して頂いた仲間がいたおかげで開発できました。今後はTR多条ネジの技術を生かし、一つのナットでも緩みにくいネジを投入するため開発に注力する所存です。 |
製品概要
「テーパータック」はアルミや樹脂といった軟らかい素材の部品を固定する際、締め付ける力でネジ山がつぶれてしまわないように補強する円すい状の部品だ。一般的にはコイル状ネジを埋め込んで補強する。作業工程が少なく、埋め込みにかかる時間は約5秒。従来のヘリサートやエンザートといった補強部品に比べ作業時間を約8分の1に短縮できる。
ネジ側に同形状の穴を開け、圧入で埋め込むのが特徴。専用の総型工具を使ってマシニングセンターなどで穴を開けるため、最大1000分の1mmの精度で位置決めできる。さらに埋め込み面の逆面から押し出すことで簡単に外れ、廃棄時の分別回収にも役立つ。作業性改善に加えて環境への配慮やリサイクルの必要性の高まりを受け、海外展開も視野に入れて拡販する方針だ。 Voice シモカワ社長 下川 剛氏
機械部品賞をいただき誠に光栄です。「テーパータック」は現場作業者の強い要望により開発された製品です。今まではコイルスプリング状の部品を使って補強していましたが、作業の難しさやコイルを入れる際に発生する切りくずなどが作業者を悩ませていました。この声が技術者に届き、生まれたのが本製品です。樹脂メーカーからのニーズを受けて調べたところ、多くの樹脂に対応できることも分かりました。すでにテーパーを使ったボルトの位置決めポストなど、応用製品の開発も完了しています。今後幅広く販売し、現場で苦労している方々にぜひ使っていただきたいと思います。 |
製品概要
「PG‐7000トルクセンサー内蔵合否判定ドライバー」は、ネジ締めの全数検査、記録、合否判定を行うブラシレス電動ドライバーとコントロールユニットで構成する。締結トルク、締結時間を基準に「何ニュートン・メートルの力で締めたか」、「何秒かかかったか」を自動検知する。ドライバーの用途は主に、自動車部品、計測機器、ガス器具、カーナビゲーションシステム、テレビなどの生産現場で使われる。
あらゆる部品の締結場面で欠かせないネジ締め。それだけに、作業者のポカミスを防ぎ不良率の低減につながるだけでなく、いわば品質管理者や検査員が内部にいるようなもので、ネジ締めの現場段階で不良を食い止め、外部への不良品出荷を防げる。製品の安全安心に大きく役立つ。 Voice ハイオス社長 戸津 勝行氏
価値を認めていただき、私はもちろん社員一同、本当に喜んでいます。ネジやドライバーは地味な分野とも言えますが、製造現場を支える重要なものです。ネジ締め技術に終点はありません。私はドライバーに対する考え方をイノベーションしようと思っているほどです。 今回受賞した製品は、世界各地の製造拠点で使われているドライバーのネジ締めデータをネットワークを通じて1カ所で集中管理することもできます。それも抜き取りではなく、全数です。ドライバーを40年間つくってきましたが、すべてリセットして新しいドライバーにしていくつもりで力を注いでいきます。 |
2010年“超”モノづくり部品大賞に機械分野では総数42件の応募があった。例年通り中小企業からの応募が多くを占め、わが国のモノづくりを支えている中小企業の技術開発意欲が旺盛なことがうかがえる。通常の機械部品としては考えにくい工具の応募が今回も多かったが、機械加工システムの重要な構成部品と考えて積極的に評価している。
日本力(にっぽんぶらんど)賞に輝いた日本トムソンの「マイクロ精密位置決めテーブルTM」は、断面高さ20mm、幅17mmという業界最小の位置決めテーブルを商品化したもので、同社のマイクロリニアウェイ、細径ボールネジ、ACサーボモーター、位置検出センサーの組み込みによって150mm/秒の高速駆動と繰り返し位置決め精度1μm(μは100万分の1)を達成している。高速、高精度位置決め機構への広範囲な応用が期待できる。
日立ツールの「超高能率加工用エンドミル『エポックミルスシリーズ』」は、不等間隔ピッチの切れ刃配置によってびびりの発生を大幅に抑制し、金型、各種部品の「高切込み、高送り」を可能として従来比8倍の高能率切削加工を実現した。野田金型の「一体品削り出しエルボ」は、従来溶接、パイプの曲げによって生産されていた配管継ぎ手90度エルボを切削加工によって可能としたもので、肉厚を自由に調整できる。オーエスジー株式会社の「ダイヤモンドコーティング超硬ダブルアングルドリル」は、航空機部品に代表される炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の穴加工において問題となる「むしれ、バリ、けば立ち」などを抑制する新たな切れ刃形状工具の提案をしたもので、従来の多結晶ダイヤモンド工具と比較して価格は数分の1に低減された。フジキンの「高温250℃対応圧力制御式ガス流量制御器」は15℃から250℃までの広範な温度域で高精度の流量制御を可能としている。東北大学との共同研究の成果であり、性能評価も信頼できる。寺尾機械の「TR多条ネジ」は、1本のボルトにピッチが異なるネジを同時に転造加工して、ナットの緩みを防止することを可能にしたもので、構造の独自性に加えて、加工方法にも独自性が見られる。シモカワの「テーパータック」は、アルミ材の締結作業工程を大幅に改善する方法として、テーパータック挿入とネジ締結を組み合わせた新たな方式を提案したもので、組み付け時間は従来方法に比較して85%短縮され、繰り返し使用が可能などのメリットがある。ハイオスの「PG‐7000トルクセンサー内蔵合否判定ドライバー」は、トルクセンサーを内蔵して、ネジ締めの合否判定と管理を高能率化、高信頼度化したものである。