製品概要
NTNが開発した「トルクダイオード」は入出力軸間のトルク伝達を制御する部品。自動車シートのシートリフター(座面の高さ調整機構)に数多く採用されている。入力軸側からのトルクを出力軸側に伝達する一方、逆方向へはトルクを伝達しないのが特徴。同社はクラッチ技術に、軸受で培った高精度プレス加工や潤滑技術を融合した。
従来、シートリフター操作部はダイヤル式が主流で操作時に大きな力を要した。同製品はくさび型クラッチ構造をベースに、小さな力で、無音、無段階のスムーズ操作ができ、2002年に登場したレバー式シートリフターに採用された。レバー式はダイヤルを回す動作が不要で、小さな力で簡単にシート座面の高さ調整ができるようになった。 Voice NTN常務取締役 福村 善一氏
トルクダイオードは、自動車シートの座面高さを手動調節する機構部に採用され、自動車シートのコンパクト化と、座面高さ調整時の省力化によるユーザー負担軽減に貢献できました。力(トルク)を一方向(ダイオード)にしか伝達しないことから、この商品名をつけ、2002年から数多くの車種にご採用を頂きました。同様機能を持つ機械要素にウォーム歯車がありますが、トルクダイオードは入出力軸が同軸構造でコンパクト。また、ローラーを使ったくさび型クラッチ技術採用で、高いシート保持力を実現しました。このほど更に薄型で、高強度な新商品も開発。次世代向け商品として積極的に市場展開してまいります。 |
製品概要
独自開発の金属の光沢感を持つインジウム蒸着層を挟んだ多層フィルムを用いてインサート成形した自動車のドアハンドル。鍵を持っていればドアハンドルに手を触れるだけで鍵を施錠・解錠するシステムの静電容量式タッチセンサーの機能を、高級車のドアハンドルで意匠用に施される金属メッキが阻害するという課題を解決する。
インジウム粒子をフィルムにドット状に蒸着し、電波透過性と絶縁性を両立した。成形技術では、深絞り部分で破れや透けなどの不具合を防ぐため、フィルムの構成や成形時の加熱と加圧のタイミングを工夫した。成形後にレーザー加工でトリミングし、美しいラインと違和感がない手触りを実現。メッキに劣らぬ意匠性を保ちつつ、環境負荷が低いのも利点だ。 Voice 太平洋工業社長 小川 信也氏
生産技術者たちが協力会社と一緒になって、夜遅くまで開発に汗を流しました。今回の受賞でこの努力が報われたことが何よりもうれしいです。この部品はメッキの美しさを再現するだけでなく、外装部品としてキズや外気に耐えられる強さも求められました。この技術の元であるメッキ代替技術を開発したのは10年余り前でした。それ以来、当社が外装分野を育成してきたことが顧客からも評価され、今回の部品開発につながりました。これからは環境への対応が一層求められる時代です。メッキに代わる技術として今後も採用車種拡大を目指し、進化を続けていきたいと考えています。 |
製品概要
3分割の電動格納式メタルトップルーフシステムでは、開閉時間が20秒と世界最速を実現した。高級車での採用を見込み、ルーフ開閉時の振動を抑制するとともに、荷室スペースを確保した。 ルーフはすべてモーター駆動とし、同時に作動する部分を多く取り入れて、開閉時間を短縮。一般的な油圧シリンダーによる駆動より細かく制御でき、氷点下でも駆動に支障がでない。ルーフを閉じる前の数cmをゆっくりと動かして、閉じる時の振動を低減した。
ルーフパネルを2分割して折り畳むように収納することで、ルーフ格納時でも直径約23cmのゴルフバッグを荷室に収納できる。総重量は60kg。システムの価格は約20万円に抑えた。トヨタ自動車の高級車「レクサスIS250C」に搭載されている。 Voice アイシン精機常務役員技術企画室長 石川 雅信氏
モノづくりの分野でこのような賞をいただいたことは非常にうれしいです。スイッチ一つ押すだけでルーフが折り畳まれ、格納される姿はそれだけで魅力的。ルーフを閉じれば快適な居住性を提供できます。若者の車離れが叫ばれる中、ユーザーがわくわくするような車づくりに、少しでも貢献できたのではないでしょうか。 当社はサンルーフやスライドドアシステム、ドアハンドル、シート関係など幅広い車体系部品を手がけています。今回の3分割メタルトップルーフシステムはこれら車体系部品で培った技術の粋を集めた部品。技術者のモチベーション向上のためにも、このような開発を続けていきたいです。 |
モノづくりの基盤である「部品」の概念が、どうやら変わり始めたようである。部品といえども「要素部品」もあれば「機能部品」もあるが、さらに部品の構造機能を超えて部品の「企画・研究・開発・生産・保守管理」を統合して取り扱う「経営戦略部品」の考えも出始めている。自動車は本来的に学際的な特性を秘め、しかも物事の伝統的な体系を超える体質を内包しているため、部品のシステム化が進むにつれて概念規定も急激に拡張しているようだ。 さて、今回の自動車部品の全般的な傾向としては高機能化、軽量小型化、電子化、新材料、高質制御がキーイシューズとしてクローズアップされている。部品賞のNTNの「シートリフタ用トルクダイオード」は、トレードオフの関係にある小型・高トルクを構造機能の最適設計によって実現し、座位姿勢での操作性を無段階確保、かつ車体空間設計にも貢献している。
太平洋工業の「光輝フィルム ドアハンドル」は、光輝フィルムのメッキ調意匠と電波透過性機能を両立させた乾式の金属蒸着システム。新たな機能意匠と環境配慮が注目される。アイシン精機の「3分割メタルトップルーフシステム」は、ECUシーケンス制御によりスピードと優雅さとステイタススポーツを実現し、かつベスト価格は世界市場への更なる展開の強みを感じさせる。 奨励賞の小島プレス工業の「自動車外装部品内蔵デジタルテレビアンテナおよび自工程完結ライン」は、構造設計と加工技術の独自性と統合技術の優位さ、車両デザインへの経済的貢献、加えて生産時の環境貢献も評価される。
自動車技術は今、エネ・エコ・ユーズのパラダイムシフトの動きが加速している。モノづくりの量から質への更なる転換を期待したい。